竹倉土偶研究所について
竹倉土偶研究所は、日本が保有する文化遺産である縄文土偶の正しい知識を、
国内および海外に発信することを目的に2021年に開設されました。
明治時代に土偶研究が始まって以来、1世紀以上にわたって土偶の正体は謎に包まれたままでした。
縄文人はなぜこのような奇怪なフィギュアを製作したのか、土偶は一体なにをかたどっているのか——
すべては謎のまま、明治、大正、昭和、平成、令和と歳月が流れてきました。
ほとんど手がかりすら掴めない状況に、近年では考古学者の中にも「数千年前の土偶の意味を復元することなど不可能である」と匙を投げる者が現れるほどでした。それもそのはず、この130年間に無数の「土偶論」が唱えられてきましたが、そのすべてが学術的な説得力と根拠を欠いた、主観的な「印象論」の範疇を超えることができなかったからです。
しかし、長らく土偶研究が停滞してきたのには、じつはれっきとした原因がありました。
とりわけ昭和期以降の土偶研究には、ある致命的な方法論の不備がありました。
(この点については後日このHPに論考を発表します)
しかし、2021年に人類学者の竹倉史人によって発表された『土偶を読む』(晶文社)において、
土偶の正体、すなわちモチーフについて、きわめて有力な新説が提示されました。
それは、土偶は女性像などではなく、縄文人が資源利用していた〈植物〉––ここには貝類も含まれます––をかたどっていたというまったく新しい仮説です。
さらに驚くべきことに、土偶は現代の「ゆるキャラ」と同じ原理によって造形されていると竹倉は言います。これは「植物の人体化(アンソロポモファイゼーション)」と竹倉が呼ぶもので、古代に製作された先史時代フィギュア prehistoric figurines の造形原理としては、まだ世界的に誰も注目していない新しい概念です。
また、竹倉は土偶のデザインに見られる造形原理のうちに一定の法則性を発見し、それを土偶の“造形文法”と呼んでいます。つまり、これまで意味不明でしかなかった土偶の複雑怪奇な姿も、この造形文法を理解すれば、その意味を具体的に解読することができるのです。
学問における「定説」が「その時点における最も合理的・説得的な説明」だとするならば、竹倉の土偶論は従来の「女性像説」などに置き換わる新しい「定説」となっていくものと思われます。
長らく正体が不明であった土偶ですが、このユニークなフィギュアのモチーフが判明したことで、土偶はたんなる日本の考古遺物であることをやめ、人類史的な価値を持つ“世界遺産”として世界中の人々を驚嘆させていくことになるでしょう。